広い庭や立派な樹木がなくても、自然観察を楽しむことは可能です。比較的手軽でオススメしたいのが、サンショウの鉢植え。大きめの鉢にサンショウの苗木を植えると、必ずと言って良いほどナミアゲハ(アゲハ蝶)を招くことができます。鉢植えですから2階や3階のバルコニーでも始められ、身近に観察することができます。

ナミアゲハはサンショウに卵を産みに訪れ、幼虫(アオムシ)が葉を食べて成長します。小さい苗木の場合、幼虫が多く発生すると葉がすべて食べられてしまうので、適度に間引くことが大切です。薬品を使うと全滅してしまうので、割り箸などで捕殺するようにしましょう。幼虫が大きく育って動きが鈍くなってきたら、そろそろサナギになる時期。羽を広げるスペースを求めて、少し離れた場所に移動することもあります。サナギを見つけたら、枝ごと大きめの飼育ボックスや網カゴに移すのがオススメ。観察がしやすくなり、脱皮する瞬間に出会えるかもしれません。

そしてサンショウの魅力は、ナミアゲハの観察だけでなく、家族も自然の恵みをいただけること。葉・花・実のすべてが食べられ、食卓に季節を演出することができます。蝶と家族で恵みを上手に分かち合う。これも生きものとの素敵な共生の暮らしではないでしょうか。

サナギを見つけたら飼育ボックスなどに枝ごと移して観察しよう!

ナミアゲハの成虫。ミカン科のサンショウなどを好んで卵を産みに訪れます。

ナミアゲハの幼虫。指で触ると黄色いツノを出して敵を追い払おうとします。

幼虫たちの過酷な試練!

蝶はたくさんの卵を生みますが、そのすべてが綺麗な蝶へと育つわけではありません。成長の過程で、雨風で枝から落ちたり、カマキリやハチ、鳥などに食べられてしまうケースも多く、運良く生きのびて蝶になるのはわずかな数です。その割合は、100個の卵からたった1〜2頭だと言われています。